すっかり傷も癒えた飛鳥が退院した後も荒木和真は診療所にいた。

話し合いの結果、記憶も帰る場所もない彼を葛葉(妖狐)が引き取り、住み込みでこき使う事になったのだ。

葛葉によれば、食事も睡眠も必要ない…
色んな“つじつま”が合っていない彼は診療所でのハードな仕事に向いているとかなんとか…

どうしてるかな、飛鳥さん…


【あの夜の言葉がいつまでも気になっていた。
目を閉じていたからわからないが、悲しそうな声だった。
…もしかしたら泣いていたのかもしれない。】

前の俺と飛鳥さんって恋人同士だったのかなのかな？

もしそうなら今の俺は…

【飛鳥さんが好きだったのは以前の自分であり、今の自分は彼女からすればただの邪魔者でしかない。
彼女の為にも必死に記憶を取り戻そうとするが、思い出せるのはほんの数日分だけだった】

先週末からずっと放置してしまい、申し訳ありませんでした。

[この書き込みへの返信は不要です。
これからもよろしくお願い致します。]

先生?
今日退院する〇〇君のご家族の方がお見えになりましたが…

わかった。

(短く返事をすると荒木和真を連れて病室に向かい、退院の日に相応しいそれっぽい会話をし)

…もう怪我なんかするんじゃないぞ?

妖狐に頭を撫でられた男の子は嬉しそうに返事をすると、迎えに来た家族と元気に帰っていった。

(気付いたわけではない。何気なく視線を向けた先に、こちらを眺めているあなたの姿を見つけ)

どうして目が合うんだろ…///

(葛葉に了解を得るとあなたのもとに駆け寄り)

飛鳥さんｯ！

荒木和真が飛鳥の近くまで来ると彼の目に異様な光景が飛び込んできた。

飛鳥の背後には見慣れた人物が一人…
鏡を見る度にこちらを見返してくるｿﾚが立っていた。

どうして自分がもう一人居るのか落ち着いて頭の中を整理しようとした矢先…

ｿﾚの腕から枝のような物が何本も伸び、飛鳥の背中めがけて襲いかかった。

(頭は相変わらず混乱していたが、自分でも驚くほど体が素早く動き、飛鳥を庇うように彼女の小さい体を抱き締めていた)

…飛鳥さんの定期検診って今日でした？

(自分の背中に軽い物がぶつかるのを感じながら腕の中の大切な人に話しかけ)

ところで…
後ろのｱﾚは飛鳥さんのお連れの方ですか？

(何も感じない筈の体に“枝”がぶつかる感触だけが伝わって来るのに疑問を感じ)

さっきからへんなﾔﾂが…、ｱﾚ?

(今までﾊﾞﾝﾊﾞﾝぶつかってきた枝が止まっている事に気付くと後ろを確認し)

…何なんだｺﾚι

(既に限界が来ていたらしい荒木和真のコピーは木のように突っ立ったまま動かなくなり)

………///

(一部始終を見ていた患者や看護士らに冷やかされながら飛鳥について診療所内を歩く…
この位置からは“ｱﾚ”は物陰に隠れていたらしく、駆け寄った自分が突然飛鳥さんに抱き付いたように見えたらしい)